フロンティア学院

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カフカ『審判』

ドグラマグラを読んだらカフカを読もう。

図書カード:審判

大体、センセーショナルな煽りがついていてもミステリ三大奇書なんて所詮ミステリの奇書であり、アンチミステリというジャンルに入れ替えてしまえばそれまでのものだ。だけどアンチミステリはおもしろい。ルールは破ってこそ面白いのだ。

カフカの作品は、そういう作品とは全く違い、ルールは破らないし、そのルールも明かされない。小説のルールという大きい所は破っているかもしれない。何が起こっているのかもよく分からないし、何を信じたらよいのかも分からない。そう言う意味で、カフカの作品はよっぽど奇書と言える。

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尾崎紅葉『金色夜叉』

まず長い。当時の流行小説でラブコメだというので1click購入(0円)したものの、kindleのメニュー画面に表示される、内容量を示すバーの長さに圧倒される。

そして少し読む。

未だ宵ながら松立てる門は一様に鎖籠めて、真直に長く東より西に横はれる大道は掃きたるやうに物の影を留めず、いと寂くも往来の絶えたるに、……

あー、そういや紅葉は西鶴の後継とか言われてたわ……。これは手強いぞ。

図書カード:金色夜叉

などということは無いので安心して欲しい。ちょっと読み進めると合コンが始まる。続いて主人公である寛一とお宮がイチャイチャし始める。そこまで辿り着けなかったら、先に二葉亭四迷の『浮雲』を読むと良い。以前にも書いたとおり青空文庫組版は酷いものだが、少なくとも長くない。それにテーマ的に似ている部分もあるから、事前に読んでおくと更に楽しめる。

そして絶世の美女と描写されるお宮とラブラブしている寛一を何だこいつ……と思っているうちに場面は展開、二人の仲は引き裂かれるのである。ここまではネタバレしても大丈夫だろう。ここからが本編だ。そう、これがギルティクラウンなら1クール目、J・P・ホーガンなら人間ドラマが終わった所だ。

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横光利一『機械』

かつて教科書で出会ったのは『蠅』だった。これは駄作である。

図書カード:蠅

日常の儚さがどうとか蠅の視点がどうとか暗喩だとか言われるのは、これが「文学」として紹介されているからで、そういう見方をすれば、どんな作品も名作である。HUNTER×HUNTERは休載を続ける事で永遠性を獲得しているとも言える。

(もちろん、文学とはどんな作品でもそういう見方をして楽しむべきものではある)

とにかく、こんな胸くそ悪い打ち切り話を書くような作家は奇をてらっていい気になってるクソ作家だろうと長年思っていた。

結論から言えばこれはとても勿体ない事だった。

『機械』はメチャクチャ面白いのだ。

図書カード:機械

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木綿以前の事

自分が「言語学」というものに興味を持った理由の一つに、男性器の俗称に関する由来の話がある。簡単に言うと、小さい→ちんこい、というもので、昨今話題の春画展などに行けば分かるとおり男性器は「大きい」ものなのだが、おちんちんと言えば通常子供のそれを示す通り、子供のものであるから比較として「小さい」のだろう。

不要な下ネタは避ける方針の当ブログで突然下ネタを展開してしまったが、このように言葉が作られていく過程が面白くて「言語学」を学んでみたい、そう考えた私は文学部へと進学した。

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純粋青空文庫批判

私は青空文庫が大好きで、特にkindleでは青空文庫しか読んでいない。これからも続いて欲しいし、もっと作品も増えていって欲しい。

江戸川乱歩の公開なんてもう既に楽しみだ。TPPって何ですか!

でも、それでいいのか?と思う所もあり、思いの丈をそのままに書き付けるものである。

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