フロンティア学院

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三浦徹『昆布を造る神』を公開しました

フロンティア学院図書館に蔵書が増えました。

三浦徹『昆布を造る神』 - フロンティア学院図書館

 

さて、旧約聖書にはマナと呼ばれる食物が登場する。

それはウロコのような白いせんべい様のもので、神より与えられたこの食物によりユダヤの民は生きながらえたという。

マナ (食物) - Wikipedia

正直な所、空から降ってくるせんべいと聞いて、あまりおいしくはなさそうに感じた。

wikipediaの説にあるように、リンゴの輪切りのような物を想像しておくべきだろうか。

本書の舞台となる北海道の地では昆布が毎年獲れるのだというが、ある老婆は「それは神様が造ってくださったものだ」と言う。

この昆布をマナになぞらえて考えると、なるほど布教譚としてありそうな話に思えてくる。

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『觀相人物評論』を公開しました

フロンティア学院図書館に蔵書が増えました。

石龍子『觀相人物評論』 - フロンティア学院図書館

 先に書いておくと、画像の入ったepubを作成するテストと、当時の人物評みたいなのが見られたら面白いなーと思って選んだので、特にこの本および、作者周囲に関しての思い入れ等はありません。よって、どこまで深入りして良い物か、悩むところではあるのですが……。

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木綿以前の事

自分が「言語学」というものに興味を持った理由の一つに、男性器の俗称に関する由来の話がある。簡単に言うと、小さい→ちんこい、というもので、昨今話題の春画展などに行けば分かるとおり男性器は「大きい」ものなのだが、おちんちんと言えば通常子供のそれを示す通り、子供のものであるから比較として「小さい」のだろう。

不要な下ネタは避ける方針の当ブログで突然下ネタを展開してしまったが、このように言葉が作られていく過程が面白くて「言語学」を学んでみたい、そう考えた私は文学部へと進学した。

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『武家義理物語』を公開しました

というわけで、選ばれたのは井原西鶴でした。

井原西鶴『武家義理物語』 - フロンティア学院図書館

何このサイト?

なんでこの作品? みたいな話を書いていきます。

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純粋青空文庫批判

私は青空文庫が大好きで、特にkindleでは青空文庫しか読んでいない。これからも続いて欲しいし、もっと作品も増えていって欲しい。

江戸川乱歩の公開なんてもう既に楽しみだ。TPPって何ですか!

でも、それでいいのか?と思う所もあり、思いの丈をそのままに書き付けるものである。

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意識の高い大人になるためにまず読むべき一冊

ブックガイド的な本とかあるじゃないですか。

あれって「デキる俺はこれを読むぜ」みたいな自慢げな奴だったり「まずは足し算から始めよう」みたいな入門向けだったり、お前それ自著だろとか、ひどい物だと選定基準バラバラだったり以上全部ごちゃ混ぜになっていたりして、結局何を読めば意識の高い大人になれるのか、未だに分かりません。

 

というわけで

そういったブックリストをかき集めて統計を取ってみたわけです。

色々あった結果(このへんは後日のネタ切れ防止のために温存)まずはデカルトの『方法序説』を読むべき一冊とするのがよいのではないかという結論に達しました。割とどのリストにも登場しており、その人気もお墨付きの一冊です。

タイトルの話はこれで終わりなので、以下ブックリストとの付き合い方を書いていきます。

 

方法序説』を読む

まず読もう。薄いし「我思う故に我在り」という言葉はなじみがあるので、へーぐらいの感じで読める。

読んだ後は得意げに「デカルトは全てを疑う事から始めたんだぜ」などとインテリぶることができる。とてもお得。これをテーマに書かれた曲に勝手に歌詞を付け足してカバーもできる。良い事しかない。

www.nicovideo.jp

しかしこれは罠で、大人の世界では哲学者の言う事は真に受けてはいけないという決まりがある。

デカルトがそうしたように、我々もまたデカルトを疑わなくてはならないのだ。

 

方法序説』を理解する

そもそもデカルトは何を疑おうとしたのか?を知るためには、プラトンだとかアウグスティヌスだとかそのへんの歴史の流れを知る必要が出てくるし、一方でデカルトを疑った人は何を言ったかってことでカントだとかハイデッガーだとかを知る事になる。

そうすると今度はその人達は何を疑ったのか?その人達を疑った人は?みたいな感じで世界がどんどん広がっていくのだ。

 

で、何が言いたいのか

ブックリストは意識が高そうな本をダラダラと並べて、読め!と訴えてくる。でも、それは文字通り読めばいいってことではなくて、それらの本を理解するには、それが生まれた歴史的背景や前後の文脈を理解する必要があって、その本だけでは完結しないはず。

リストで勧められるような本は、解説本や批判本が出ていたりと情報収集が容易な物が多いので、それらが至高の名作であるっていうよりは、最初のライバルを見つけ出すためのガイドなんだと思って向き合うのが良いのです。

ブックリストの本を読んでるからエライというわけでなく、入り口がこんなにあるんだ!ぐらいに捉えておけばいいわけです。

その中でも方法序説は多くのリストで挙げられている事から、まずは読むべき一冊としてもいいんじゃないかな、という事で取り上げました。

 

お金も興味もない人へ

方法序説なら岩波文庫とかで買えますが、プロジェクト杉田玄白でもタダで読めます。

近デジ(国デコ)でも読める。

まずは試しに触れてみてはどうでしょう、と言いたい所ですが……。

 

プロ杉や近デジはウェブサイトなので読みづらい。

近デジに至っては戦前の資料なので旧仮名遣いと戦う必要がある。

青空文庫ならkindleで読めるが、デカルト自体が無い。

多くのブックリストが「読んでおくべき」としている古典がこの有様なのだ。

そのへんのディスりとかの話はまた次回にします。


よし、本を勧めておきながら内容にほとんど触れずにここまで書けたぞ。