フロンティア学院

パブリックドメインから世界をめざす

正岡子規『歌よみに与ふる書』

描写力を磨くなら俳句をやりましょうという話をたまたま目にしました(これについては別途書くかもしれません)。
俳句と短歌は別物という話はちょっと置いておいて、これら短い文字数で物を語るメディアにはあまり興味がなかったので、とりあえず解説書っぽいものを自前の名著ブックリストから選びました。

世間で言われる名作の類をボロクソに叩いていくという、なかなかロックな内容でした。
図書カード:歌よみに与ふる書

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中島敦『弟子』

みなさん『論語』は読んでいるでしょうか?
私は最近ようやく最後まで読んだのですが、以前、一部を読んだ時に感じた「クソジジイのたわごと集」というイメージは特に覆ることはありませんでした。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000119/card1738.html

そんなクソジジイの何がありがたいのか、弟子の子路を主人公として描いた作品である。

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徳冨蘆花『不如帰』

どうも自分には学が無いので、このタイトルを「不如婦」だと思っていて、最初の方を読んで、これは不倫の話だ! と思って読んでいたらそんなことはなかった。*1

図書カード:小説 不如帰

よくよく読んだらちゃんと序文で作者自らネタバレしているとおり、悲恋の話である。金色夜叉に続く19世紀末のベストセラーだ。

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太宰治『斜陽』

恥の多い生涯を送ってきたので太宰治は教科書でメロスが走って以来、読んだ事がありませんでした。

図書カード:斜陽

なので、太宰については深くは存じ上げませぬ。世間では彼自身の人生と作品との結びつけや、複数の作品に渡るテーマなどを研究されているのでしょうが、そうした一切を知らずにこのブログを書いております。

それでもメロスがどうやら富野で言うキングゲイナー的な作品であるとの噂はかねがね聞き及んでおり、また作者が熱心な芥川信者であったこと、一部で熱狂的に支持されるような愛され方を見ていても、どうも太宰作品というのは、盗んだバイクで自由になれた気がする尾崎豊のような作品なんじゃないか、とは長年思っておりました。

ところが、実際に読んでみると、これはまったく違っておりました。と申しますのは、まず主人公が女性。物語もファンの方には失礼ながら、女々しいと言いますか、どちらかといえばバイクを盗まれた側、ガラスを割られた校舎の側のような内容で、やや自伝的にも思える作風は芥川よりも、むしろ漱石に近いようにも思われたのです。

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小川未明『青い石とメダル』

今日はいつも楽しく読ませて頂いている「青空文庫を読むブログ」からお題を拝借したいと思います。

aozorabunko.hatenablog.jp

この『青い石とメダル』は、犬を助けるために主人公の勇ちゃんが色々やってメデタシメデタシという話なんですが、上記ブログにも、

一見単純に見える内容だからこそ、想像の余地が残されています。

あるように、色々な読み方をできる要素が散りばめられています。

そこで、当学院では少し悪い想像をしてみたいと思います。

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海野十三『十八時の音楽浴』

覚醒剤にまつわる話が街を賑わせている昨今、得意げに「覚醒剤は用量・用法を守って使えば有益なものである。カフェインがそれである」などという、コーヒーだけに豆知識も耳に入ってくるが、真偽はさておき、その話を聞いて思いだしたのが海野十三の『十八時の音楽浴』である。内容は大体そんな話だ。

図書カード:十八時の音楽浴

この作品には現代に通じる様々な未来が描かれている。

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魯迅『阿Q正伝』

教科書に載る作品はつまらなく感じる。それは読み方を強制されるからだと思う。

物語は本来面白い物で、ぼくたちが漫画やアニメを楽しんだように当時の人達もこういった教科書に載るような物語を楽しんでいたのだ。

それが教科書で登場すると、途端に高尚な「正解」を持った作品とされてしまい、つまらなくなってしまう。

そうして昔の作品はつまらないなあと思って手に取ることもしない。それはとてもとても残念なことだ。

魯迅の作品はまさにそんな教育の被害者とも言える。

図書カード:阿Q正伝

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