フロンティア学院

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『日本文学』1953年7月号を読む

目次の紹介

『日本文学』1953年7月号
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/nihonbungaku/2/5/_contents/-char/ja

  1. 西郷 信綱『山上憶良――文学形式をめぐって――』
  2. 馬場 あき子『狂言小歌について』
  3. 玉城 徹『白秋覚書』
  4. 《書評》「日本文学の伝統と創造」
    1. 道家 忠通『「日本文学の伝統と創造」について』
    2. 杉森 久英『一筋縄で行くものではない』
    3. 永積 安明『文学伝統の課題』
  5. 湯山 厚『生活綴方論』
  6. むしゃこうじ みのる『大石田の風流について』
  7. 大石 修平『祖国と目的意識』
  8. 波多野 太郎『老舎のレアリズム―中国近代文学史の一系列―』
  9. 吉田義孝『《書評》北山茂夫「万葉の世紀」』
  10. 大会の印象
  11. 富山支部の現状

以上は表紙の記述に基づいておりJ-STAGEのそれとは必ずしも一致しない。
旧漢字は現行のものに統一している。
1、2、4-2、4-3はWeb公開されていない。

感想

メイン記事がほとんど削られているのでWebで見る限り中身が薄い。
なんか白秋はすごい!読めば分かる!あきらかにすごい!他はウンコ!ウンコを評価する奴もウンコ!みたいな怪文書も紛れていてドキドキする。
全体としては紹介を目的とした内容が多く、時代的には情報が古いのでなんだかなあと思うところも。
老舎とか普通に知らんかったので、当時注目されてた人を知る意味では楽しい。

「日本文学の伝統と創造」について

何故いま「伝統と創造」なのか? という背景について触れられている。
文明開化で西洋かぶれなところに敗戦で植民地化されて西洋ドップリですよね、だから伝統を思い出さないとダメだよねって話。
今となってはという感もあるんだけど、こういうのとか「民衆の抵抗」みたいな時代感を知っておかないと、目当ての論文を単独で見たときに「伝統という視点は新しいな!」とか勘違いしちゃう可能性がある。
あと研究って流行があるよねっていうところ。
流行があるということはリバイバルもあるにちがいない。

大石田の風流について

芭蕉大石田で行った歌会(奥の細道に出てくるらしい)についての考察・示唆。
この分野には素人ですが……という出だしの割に詳しいので、こういう人は昔からいたのかという驚き。これこそ伝統だ。
芭蕉本歌取りの俳句をあげ、本歌と同じ言葉を江戸期の用法で使っていることを指摘し、本歌取りだから伝統重視みたいな決めつけはよくないよみたいな話(だと思う)。
で、大石田の歌会は俳句派閥の激戦地みたいなところで行われており、バリバリ最先端の芭蕉が手応えを感じたと書いてるんだから何があったんかもっと注目していいのでは? という示唆。
で、何があったの? って感じなんだけど、こういう新しい読み方を提案するのが文学研究だよなって思ってるので、もっとこれ系のが来ないかなっていうのと、別の形の自分が納得できる文学研究があるかどうかにも期待している。