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『墨子』を読む(備城門篇5)

墨子』の連載を始めてしばらく経つが、特に城攻めや攻城戦といったワードで検索された形跡が無く、皆さんは城を守る気が無いのかと不思議に思う所である。

城も守れないようでは一体何が守れるというのか。引き続き墨子の教えを読み解いていこう。


例によってテキストはこちらを参照いただきたい。
漢籍国字解全書『墨子 備城門』

墨子注釈書について

今回読むのは「昔築」から始まる部分。解説には意味が分からん!とあるが、畢沅という人の注では「皆築く」のことであるとされている。この人の注、畢注という言葉はたびたび出てくるが、これもなんとタダで読める。
国立国会図書館デジタルコレクション - 墨子16卷. [5]

ついでに孫注というのは孫詒讓による『墨子閒詁』のことだが、これもなんとタダで読める。というか、畢注も合わせてまとめられているので基本的にこっちを見ればいい。
墨子閒詁 : 卷十四 : 備城門 - 中國哲學書電子化計劃

ところで、これらは話の順序が参考テキストと全然違うのだが、そのあたりも錯簡があったようなことが書いてあって面白い。


話は戻って、この部分は前段からの流れとして、皆の道具を集めて配置しておこうという趣旨と理解する。

孫注を引いてるはずの解説書いてる人が説明を放棄していたり、段々なげやりになってくるのだが、以前に書いたとおり*1ほぼ唯一といっていい日本語の解説書なので我慢しよう。

道具を準備する

1.2メートルに一個、のこぎりと手斧を置く。1メートルに一個、モッコ*2を置き、鋤*3を用意する。
「五築」という距離なのか数量なのか不明な単位はスルーしておく。

これらの道具は、次段で穴を掘ったりするために使うのだろう。
つまり、城門の外に置いておくものと考えられる。

武器を準備する

柄の長さが1.5メートルの長斧と鎌を用意する。長斧はたぶん、鋤と一緒に置いておく。鎌は10メートルに一個置き、同様に手斧、柄の長さが1メートルの長い錐を置く。この錐は刃の部分が18センチあるものとする。

鎌は『六韜』によれば山林での戦いの折に草木を刈る為に用意するとある。長斧はサイズからしても戦闘用のものをイメージするが、今のところ用途は分からない。錐は槍のようなものではないか。

次に3.2メートルに一個、小矛を置く。18センチのうち9センチを刃として、爪のように尖らせておく。

その後の部分は意味が分からず、解説も投げ遣りな感じだが、しっかり尖らせておかないと実用できないといった意味だろう。

まとめ

民衆より道具の調達を行った。

準備した武器については用途の不明なものが多いが、おそらくは身近にあるものを調達して、次段の作業時に敵襲があった際の備えとしているのではないか。

こうして道具の準備が出来た所で、城の守りを一層固めていくことになる。