フロンティア学院

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佐野学『西洋社會思想史』を公開しました

イエス・キリスト共産主義者である!などと言われるとびっくりしてしまうが、実際そういう見方もあるらしい。

確かに必要なものを必要な人が使い、各自が役割を果たすのが共産主義と考えると、宗教自体がそういう傾向があるのかもしれない。

佐野 學『西洋社會思想史』 - フロンティア学院図書館

というわけで、ちょっとそういう方面寄りの視点が入っているが、西洋の国家に対する思想の流れがまとめられた一冊だ。

これは単純に読んでいて面白かったし、扱っているのが有名人ばかりということもあって、仮にバリバリに偏った解釈がされていたとしても他の書籍で補完できるし、他を調べるとっかかりにもなる。概論系って結構狙い目かもしれない。

怖くない共産主義

ところで共産主義と言うと一時期のヤンチャな人達を連想してしまって正直あまりいいイメージは無いのだが、理想としてはそれなりに共感できる点がある。

たとえばたまたま隣の人が野菜を作るのが好きすぎて作りすぎてしまったから分け与えるように、たまたまこういうブログを書いていたら誰かの役に立って、嫌々興味のない苦手な事をやらずに生きていけるとしたら、そんなに素晴らしい事はないだろうと思える。

しかし実際には隣の人は全世界の野菜を賄うほど野菜作りを好まないし、このブログが世界を救うという事もないから、その理想をどっかに置き換える必要があるわけで、それが「通貨換算して考えよう」とか「好きな事をガマンしよう」とかになって、いろんな妥協案が提示されてきたのだ。

この本と作者・佐野学について

冒頭で獄中がどうのという話が出てくるし、wikipediaで作者の項を見ても*1なんか怖そうな事が書いてあって、あんまり触れてはマズそうな気がしてくる。

実際マズいのかもしれない。

しかし、そのへんは見ないようにすれば、人のよさそうな感じで割と分かりやすく、上記で言う妥協案を説明してくれている。この本を読む限りは、すごく人柄が良い熱心な研究者だったのではと思える。

それでもやっぱりちょっと偏ってる気はするけど、そこは眼を瞑ろう。

墨子とかベーコンとか

最近このブログでは墨子のマニアックな所を読む企画を進めているが、実のところ墨子の概要はこの本で知ったのである。しかも、説明を読む限り、墨家の思想は「みんな一緒にガマンしよう」という方向に妥協しているようで、ハッキリ言ってそこはあまり好きではない。誤解かも知れないのでいずれちゃんと読むつもりではある。

登場する中ではむしろフランシス・ベーコンの「新アトランチス*2」が面白そうな雰囲気だった。なんと国立国会図書館デジタルコレクションで読める*3のでいずれ取りあげるかもしれない。


そんな感じでブックガイドとしても楽しめる一冊、読書の夏に是非いかがでしょうか。

あと全くアナウンスしてなかったんですけど、epub版置いてたレンタルサーバが死亡してしまったので、電子書籍化の活動はお休みしています。どっかいい置き場所がありましたらお知らせ下さい。