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迫間房太郎『産金政策の一私見』を公開しました

迫間房太郎『産金政策の一私見』 - フロンティア学院図書館

前回に引き続き数稼ぎであるという本音の部分は一旦どこかに置き忘れてもらって、この迫間房太郎氏が問題なのである。この名字は何と読むのでしょうか。

さこま? はざま? はさま?

底本の書誌情報では何事も無かったかのように「サコマ」と表記されているが、これはおそらく間違いと見て良い。その根拠は、国立国会図書館デジタルコレクションにある次の本による。

国立国会図書館デジタルコレクション - 従業員心得 : 島津源蔵氏訓示

丁寧にふりがなで「はさま」とある。氏が存命時の表記であり、少なくとも「さこま」が正解とは考えづらい。

迫間房太郎 釜山 韓国

こちらのサイトはほぼ唯一の迫間房太郎氏について書かれたものだが、かなり詳細に研究されているようで、同一の底本を参照した可能性はあるが「はさま」表記となっている。

では「はさま」が正解かというと、一概には決めつけがたい。

 

台頭!はざま説

例えば次のような書誌情報があり、こちらは「はざま」表記である。

CiNii 図書 - 迫間房太郎翁略傳

この本をネット上で読むことができないのは残念だが、国デジ同様に間違いの可能性はあるものの、そもそもは地名で「はさま」と読んでいたものが、時代を下るにつれて「はざま」となったようである。

dictionary.goo.ne.jp

また、家系の成立時期が不明のためどの程度の関連性を見て良いのか判斷に迷うが、同義である狭間について、1930年には桶狭間はすでに「おけはざま」で定着していたようである。

国立国会図書館デジタルコレクション - 少年織田信長伝

ハングルでの表記

ここで、視点を変えて、彼が釜山にて活動したことを踏まえ、ハングル文字に当たってみる。

検索結果の紹介は省略するが「하자마 후사타로」が536件、「하사마 후사타로」が42件であった。房太郎の「さ」が「사」に対応することから、この結果を信頼する限りはハングル語圏では「はざま」(正確には「ハヂャマ」だろうか)として通っているように思われる。

余談だが、ハングルでは基本的に濁音を濁音として用いない。普通の言葉を強調した際に音が濁る、といったものらしい。昔知り合った韓国人女性の友人に罵倒されると「バガか!」「パカヤロー」などと言われて大変興奮したものだが、それはさておき、敢えて濁音を想定した表記を行うと言うことは「はざま」と呼ばれていた可能性が高いのではと考えるのだ。

 

実態としてはよくわからないし、御子孫の方に伺う機会でもあれば直ちに判明するものだが、とりあえず現状ネット上で集められる資料からは「はざま」説を推したいと思う。

 

本書の内容

金転しに夢中で資産を有効活用しない投資家

短いので読んで頂ければと思うが、投資家が売買の事ばかり考えて実際の業務がおろそかになっているから国がなんとかせーや、という内容である。

金を転がしている人達に生産性が無いとは言わんが、金儲けを目当てに転がすからせっかくの宝の山が掘り起こされもせずに眠ってしまい生産性が上がらないぜ、という話で、現代の株式投資にも通じる話で人は変わらないものだと感じる。

 

迫間房太郎は何を訴えたか

本作は、具体的な数字と方策を挙げて改善を促すというのが本書の内容であるが、その数字の信憑性のほどは分からない。

しかし、太平洋戦争を前に控えた時期の朝鮮開発の状況や、金銭事情というのはなんとなく読み取ることが出来る。当時の経済感覚というのも参考になるのではないだろうか。

江戸時代の台帳やメモ書きからでも読み取れる文化はいくらでもあるのだ。本書もそのように役立つ事もあろう。

あと、個人的にはこうした半ば同人誌のようなテキストについて、印刷社の存在が気になっている。調査ができるほどに今後蔵書が蓄積される可能性は正直薄いのだが、書誌情報でもなかなか記載されない点なので、あえて文字起こしを行っている。何かの研究に役立てばよいなと思っている。

 

電子書籍版の用意について

所で今回は電子書籍版を用意していない。

長さ的に別にいいでしょ、というのと、とりあえず新興の弱小サイトは形だけでも数を伸ばしておきたいので、後でも出来ることは後で行うこととした。

実際の所誰も落として無いやろ……とも思うので、後日の課題とすることをご容赦頂きたい。

それでは近いうちに次の短い書籍でお会いしましょう。