フロンティア学院

パブリックドメインから世界をめざす

井原西鶴って本当に人気だったの?

 井原西鶴について、ちょっと調べていた。

 実は平家物語が好きすぎてロボットファンタジー小説を書いていたのだが、好きすぎるあまり色々調べ始めてしまってどうにもならなくなってきたので、少し寄り道したのだ。
 小説も面白いから、ぜひ読んで欲しい。
novelup.plus


 それはさておき、世の中の大前提として、井原西鶴は有名な人気作家とされている。
 しかし、それは教科書に載っているからとか、明治に再評価されたからといった具合で、本当に当時から人気作家だったのかはイマイチ見えてこない。
 専門家にとっては常識だろうが、その真偽について、ネットで調べてみよう。

 なお結論としては西鶴は当時も人気だったと考えられる。
 それを裏付けるためにどんなアプローチが取られていたのかを紹介していこう。

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古典は本当に必要なのか?

「古典は本当に必要なのか」と題されたシンポジウムが開催され、ありがたいことにネット配信で無料視聴することができた。
www.youtube.com

そもそも学習指導要領の改訂により、高校教育における古典の授業時間が削減される、ということで、古典の授業は減らされても仕方ないのか?という問いかけであり、必要派不要派のプロレスという体裁の催しだった。
視聴直後の自分の感想はこれ。

その他イベント自体について思うことはあったが、実際に参加されていた方がすでに言及されているのでそちらを参照頂きたい。
jewelbox.hatenablog.jp
上記動画の書き起こしへのリンクもある。

以下は内容のざっくりまとめと、個人的な感想である。

古典の定義
・近世以前の日本・中国の史料およびそれを読む方法
(※イベント内での定義とは異なるが、この記事内ではこれで統一する)

古典不要派の主張
・実用性を考えると相対的に優先度が低い
・現代語訳で十分
・音楽や美術のように選択教科で良いのでは
・現代的に適切でない内容のため学ぶ必要はない

古典必要派の主張
・古典はおもしろい、心が豊かになる、定性的な教養になる
・原文でなければ味わえないリズムがある(特に和歌など)
・日本を理解する助けとなり、伝統を大切にする土壌が生まれる
・古典は過去事例の集積であり知識・ツールとして有用

両主張を対比させたかったので少々無理のある要約をしているので一次ソースにも目を通しておいて欲しい。
全体として不要派が実用性を主張するのに対し、必要派は実用性以外のところを主張しており、ややかみ合っていない印象はあった。
目的が問題提起と考えると、そういった対立構造も意図的であるのかもしれない。

ただ、古典は焚書!みたいな意見があったのは(古典の定義の違いとは思うが)残念なところ。不要派が圧倒的に有意義な議論を展開していたのに、結局ディストピアがお望みか~と次元の低い話が突然入り込んでしまった。

さて、以上を踏まえて、問題提起に対して個人的な感想を書きます。
個人的には必要派に立ちたいので、次をテーマにする。

高校生に対して古典の果たす役割は何であるのか?

つまり、古典が果たさなくてはならない役割がある、その役に立つからこそ、古典は必要なのだ。

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家から一歩も出ずに平家物語の研究をする

久しく放置していましたが、お金を払う方の本を読んだり、他の所で文章を書いたりしてました。そのへんの言い訳は別途まとめます。


さて、当学院ではオンライン上のパブリックドメイン文献を扱っていますが、一体何がそんなに嬉しいのか?ということを改めて主張し、検証したいと思います。
そのために、例として「家から一歩も出ずに研究をする」ことにします。
※一部パブリックドメインとは関係ありません。

とはいえ論文ガチ勢の方々の観賞に堪えるものをアドリブで書くのは難しいので、そこんとこは容赦して下さい。


テーマは壮大に「平家物語諸本の成立順序を推測する(得長寿院供養を中心に)」としましょう。

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正岡子規『歌よみに与ふる書』

描写力を磨くなら俳句をやりましょうという話をたまたま目にしました(これについては別途書くかもしれません)。
俳句と短歌は別物という話はちょっと置いておいて、これら短い文字数で物を語るメディアにはあまり興味がなかったので、とりあえず解説書っぽいものを自前の名著ブックリストから選びました。

世間で言われる名作の類をボロクソに叩いていくという、なかなかロックな内容でした。
図書カード:歌よみに与ふる書

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『墨子』を読む(備城門篇5)

墨子』の連載を始めてしばらく経つが、特に城攻めや攻城戦といったワードで検索された形跡が無く、皆さんは城を守る気が無いのかと不思議に思う所である。

城も守れないようでは一体何が守れるというのか。引き続き墨子の教えを読み解いていこう。


例によってテキストはこちらを参照いただきたい。
漢籍国字解全書『墨子 備城門』

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中島敦『弟子』

みなさん『論語』は読んでいるでしょうか?
私は最近ようやく最後まで読んだのですが、以前、一部を読んだ時に感じた「クソジジイのたわごと集」というイメージは特に覆ることはありませんでした。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000119/card1738.html

そんなクソジジイの何がありがたいのか、弟子の子路を主人公として描いた作品である。

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徳冨蘆花『不如帰』

どうも自分には学が無いので、このタイトルを「不如婦」だと思っていて、最初の方を読んで、これは不倫の話だ! と思って読んでいたらそんなことはなかった。*1

図書カード:小説 不如帰

よくよく読んだらちゃんと序文で作者自らネタバレしているとおり、悲恋の話である。金色夜叉に続く19世紀末のベストセラーだ。

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