フロンティア学院

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カフカ『審判』

ドグラマグラを読んだらカフカを読もう。

図書カード:審判

大体、センセーショナルな煽りがついていてもミステリ三大奇書なんて所詮ミステリの奇書であり、アンチミステリというジャンルに入れ替えてしまえばそれまでのものだ。だけどアンチミステリはおもしろい。ルールは破ってこそ面白いのだ。

カフカの作品は、そういう作品とは全く違い、ルールは破らないし、そのルールも明かされない。小説のルールという大きい所は破っているかもしれない。何が起こっているのかもよく分からないし、何を信じたらよいのかも分からない。そう言う意味で、カフカの作品はよっぽど奇書と言える。

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長谷川尚一『石油なくして何の新秩序の建設ぞ』を公開しました

石油が太平洋戦争の引き金の一つだという話は聞いたことがある。漫画『ジパング』でも後世中国で発見される油田を当時の日本が発見していたら、という話が展開されていた。

そんな石油に関する話だ。

長谷川尚一『石油なくして何の新秩序の建設ぞ』 - フロンティア学院図書館

日本にも油田はある! 何故採掘しない! 石油禁輸されたら死ぬぞ! みたいな事が書かれている。

この訴えの2年後の1941年、その予想は現実となった。

それにしても日本に油田があるというのは本当だろうか?

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尾崎紅葉『金色夜叉』

まず長い。当時の流行小説でラブコメだというので1click購入(0円)したものの、kindleのメニュー画面に表示される、内容量を示すバーの長さに圧倒される。

そして少し読む。

未だ宵ながら松立てる門は一様に鎖籠めて、真直に長く東より西に横はれる大道は掃きたるやうに物の影を留めず、いと寂くも往来の絶えたるに、……

あー、そういや紅葉は西鶴の後継とか言われてたわ……。これは手強いぞ。

図書カード:金色夜叉

などということは無いので安心して欲しい。ちょっと読み進めると合コンが始まる。続いて主人公である寛一とお宮がイチャイチャし始める。そこまで辿り着けなかったら、先に二葉亭四迷の『浮雲』を読むと良い。以前にも書いたとおり青空文庫組版は酷いものだが、少なくとも長くない。それにテーマ的に似ている部分もあるから、事前に読んでおくと更に楽しめる。

そして絶世の美女と描写されるお宮とラブラブしている寛一を何だこいつ……と思っているうちに場面は展開、二人の仲は引き裂かれるのである。ここまではネタバレしても大丈夫だろう。ここからが本編だ。そう、これがギルティクラウンなら1クール目、J・P・ホーガンなら人間ドラマが終わった所だ。

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横光利一『機械』

かつて教科書で出会ったのは『蠅』だった。これは駄作である。

図書カード:蠅

日常の儚さがどうとか蠅の視点がどうとか暗喩だとか言われるのは、これが「文学」として紹介されているからで、そういう見方をすれば、どんな作品も名作である。HUNTER×HUNTERは休載を続ける事で永遠性を獲得しているとも言える。

(もちろん、文学とはどんな作品でもそういう見方をして楽しむべきものではある)

とにかく、こんな胸くそ悪い打ち切り話を書くような作家は奇をてらっていい気になってるクソ作家だろうと長年思っていた。

結論から言えばこれはとても勿体ない事だった。

『機械』はメチャクチャ面白いのだ。

図書カード:機械

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迫間房太郎『産金政策の一私見』を公開しました

迫間房太郎『産金政策の一私見』 - フロンティア学院図書館

前回に引き続き数稼ぎであるという本音の部分は一旦どこかに置き忘れてもらって、この迫間房太郎氏が問題なのである。この名字は何と読むのでしょうか。

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三浦徹『昆布を造る神』を公開しました

フロンティア学院図書館に蔵書が増えました。

三浦徹『昆布を造る神』 - フロンティア学院図書館

 

さて、旧約聖書にはマナと呼ばれる食物が登場する。

それはウロコのような白いせんべい様のもので、神より与えられたこの食物によりユダヤの民は生きながらえたという。

マナ (食物) - Wikipedia

正直な所、空から降ってくるせんべいと聞いて、あまりおいしくはなさそうに感じた。

wikipediaの説にあるように、リンゴの輪切りのような物を想像しておくべきだろうか。

本書の舞台となる北海道の地では昆布が毎年獲れるのだというが、ある老婆は「それは神様が造ってくださったものだ」と言う。

この昆布をマナになぞらえて考えると、なるほど布教譚としてありそうな話に思えてくる。

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『觀相人物評論』を公開しました

フロンティア学院図書館に蔵書が増えました。

石龍子『觀相人物評論』 - フロンティア学院図書館

 先に書いておくと、画像の入ったepubを作成するテストと、当時の人物評みたいなのが見られたら面白いなーと思って選んだので、特にこの本および、作者周囲に関しての思い入れ等はありません。よって、どこまで深入りして良い物か、悩むところではあるのですが……。

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